仕事エンドレス
作:橙野ユキオコンクリートは無事に打ち終わり、僕は休憩所でジュースを飲んでいた。
大仕事が終わったばかりだが、これで帰ることができないのがこの仕事の辛いところ。
清々しく帰っていく職人さんたちを、うらやましく思いながら見送った。
日報のまとめ、行政機関への提出書類作成、現場の進捗状況の報告、明日の現場の動きの確認、それに伴う危険個所があれば注意喚起の看板を作成し掲示、現場で撮った写真の編集、事務所の掃除・・・
竣工前にはこれに加えて竣工図書の作成もあった。
日中は現場に出ているので、これらの仕事は現場が終わって職人さんが帰った後の仕事だ。
これらの仕事を僕が一人でやっていたわけではない。
所長、大宮さん、僕。
お互いに情報交換しながら、少しでも効率よくやって早く帰ろうという空気が流れていた。
三人の思いは同じだった。しかし、現実と反比例して仕事はどんどん増えていった。
お金のやり取りや図面を描く仕事が無い分、僕は他の二人よりもマシだった。
そうであったとしても、始発で行って終電で帰る生活に変わりはない。
竣工日は決まっているのに、永遠にこの生活が続くような気がしていた。
この頃はよくお腹が空いていた。牛丼屋に駆け込む元気はあるのに、自炊する元気は無いという不思議。
時計を見て日付が変わっており、ふとした瞬間に、
『あと六時間後には、またあそこに戻るのか。』
と思うと、牛丼が現場の土に見えてきた。そして、その日を境に茶色い色の食べ物から箸が遠のいた。
会社を辞めたらいい。今では本当にそう思う。給料のために自分の全てを捧げるなど馬鹿馬鹿しいとさえ思う。しかし、この時、僕は他人の目ではなく自分の目を気にして生きていた。