Psychoro

パニック野郎と僕物語 第3話「仕事エンドレス」

仕事エンドレス

作:橙野ユキオ

 

コンクリートは無事に打ち終わり、僕は休憩所でジュースを飲んでいた。

大仕事が終わったばかりだが、これで帰ることができないのがこの仕事の辛いところ。

清々しく帰っていく職人さんたちを、うらやましく思いながら見送った。

 

日報のまとめ、行政機関への提出書類作成、現場の進捗状況の報告、明日の現場の動きの確認、それに伴う危険個所があれば注意喚起の看板を作成し掲示、現場で撮った写真の編集、事務所の掃除・・・

竣工前にはこれに加えて竣工図書の作成もあった。

日中は現場に出ているので、これらの仕事は現場が終わって職人さんが帰った後の仕事だ。

これらの仕事を僕が一人でやっていたわけではない。

 

所長、大宮さん、僕。

 

お互いに情報交換しながら、少しでも効率よくやって早く帰ろうという空気が流れていた。

三人の思いは同じだった。しかし、現実と反比例して仕事はどんどん増えていった。

お金のやり取りや図面を描く仕事が無い分、僕は他の二人よりもマシだった。

そうであったとしても、始発で行って終電で帰る生活に変わりはない。

竣工日は決まっているのに、永遠にこの生活が続くような気がしていた。

 

この頃はよくお腹が空いていた。牛丼屋に駆け込む元気はあるのに、自炊する元気は無いという不思議。

時計を見て日付が変わっており、ふとした瞬間に、

 

『あと六時間後には、またあそこに戻るのか。』

 

と思うと、牛丼が現場の土に見えてきた。そして、その日を境に茶色い色の食べ物から箸が遠のいた。

 

会社を辞めたらいい。今では本当にそう思う。給料のために自分の全てを捧げるなど馬鹿馬鹿しいとさえ思う。しかし、この時、僕は他人の目ではなく自分の目を気にして生きていた。

 

 

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