作:橙野ユキオ
電話で上司に、「今日は欠勤したい。」という意思を伝えると、身体の不調はピタリと治まった。由美が話しかけてくる。
「今日は私も休みだから、病院に行こう。」
二人で彼女の部屋を出る。11月ということもあり、大阪の街は少し肌寒い。その寒さが胸の奥を揺らす。凄くうるさい様な、無音の様な、よくわからなくなった街を駅に向かって歩く。そんな中で、自分の心臓の音だけは、ハッキリと聞こえていた。
電車に乗り、内科の病院へと向かう。由美の見立てでは、免疫力が落ちて風邪をひいてしまったんじゃないか、とのことだ。僕は自分の身体のことが信用できなくなっていたので、由美の言うことを素直に信じた。それにしても、あいつは一体誰だったんだろう。何者だったんだろう。「俺はお前だ。」という言葉が頭の中をグルグルと回っていた。
内科で診察してもらうも、原因はわからなかった。身体は健康そのもの。原因がわからないことに由美は少しイライラしていた。
「おかしいなぁ。あんなに調子悪そうやったのに。今は元気になってるし・・・。」
看護師としてのキャリアが、現実を真実から遠ざけてしまったのかもしれない。この時は僕も、自分の身体のことがよくわからず、困惑していた。その後、僕のプロフィール欄に『パニック障害』という単語が書き込まれるのは、この時から半年も経ってからのことになる。当時は二人とも風邪だと思っていた。
その日は寮に帰ることにした。会社を休んで、彼女の家に居たとなっては都合が悪い。電車は僕を寮に連れて行く。次第に空気が重くなっているように感じた。
電話で上司に、「今日は欠勤したい。」という意思を伝えると、身体の不調はピタリと治まった。由美が話しかけてくる。
「今日は私も休みだから、病院に行こう。」
二人で彼女の部屋を出る。11月ということもあり、大阪の街は少し肌寒い。その寒さが胸の奥を揺らす。凄くうるさい様な、無音の様な、よくわからなくなった街を駅に向かって歩く。そんな中で、自分の心臓の音だけは、ハッキリと聞こえていた。
電車に乗り、内科の病院へと向かう。由美の見立てでは、免疫力が落ちて風邪をひいてしまったんじゃないか、とのことだ。僕は自分の身体のことが信用できなくなっていたので、由美の言うことを素直に信じた。それにしても、あいつは一体誰だったんだろう。何者だったんだろう。「俺はお前だ。」という言葉が頭の中をグルグルと回っていた。
内科で診察してもらうも、原因はわからなかった。身体は健康そのもの。原因がわからないことに由美は少しイライラしていた。
「おかしいなぁ。あんなに調子悪そうやったのに。今は元気になってるし・・・。」
看護師としてのキャリアが、現実を真実から遠ざけてしまったのかもしれない。この時は僕も、自分の身体のことがよくわからず、困惑していた。その後、僕のプロフィール欄に『パニック障害』という単語が書き込まれるのは、この時から半年も経ってからのことになる。当時は二人とも風邪だと思っていた。
その日は寮に帰ることにした。会社を休んで、彼女の家に居たとなっては都合が悪い。電車は僕を寮に連れて行く。次第に空気が重くなっているように感じた。