パニック野郎と僕物語 プロローグ
作:橙野ユキオ僕について、世界で一番興味があるのは、僕だ。
今年で34歳。今までも色々あり、これからも色々ある“僕の世界”で、これは数少ない真理だと思う。
僕の名前はユキオ。優しい電気屋の父と明るく朗らかな母の間に生まれ、鳥取の大自然の中で不自由なく育った。二人の弟たちと、時に喧嘩し、時に仲良く、日が暮れるまで遊んでいた子供の頃は、34歳の自分がこんな大人になっているとは思いもよらなかった。
想像もしなかった大人になっているなぁ。と思う一番の理由は、25歳の時に発症したパニック障害だ。
これから始まる物語は現在進行形であり、まだしばらくは終わりそうにない“僕の物語”である。
今回、僕がこの『サイコロ』上でパニック障害についての体験記を書いてみないかと誘われた時、書いてみようと思った理由は2つある。1つ目は、最近になってやっと自分のことを振り返る余裕が出来たこと。冒頭の一文が僕の核になってから、他人のことが必要以上に気にならなくなった。
僕について、世界で一番興味があるのは、僕だ。
言い換えれば、他人は僕ほど僕に興味を持っていないということ。今まで他人に対して使っていた時間を自分に対して使えるようになった。気持ちと時間に余裕が出来たので、これまでの自分を振り返ることで得られる新たな気付きを、これから生きていく中でのヒントにしたい。
2つ目は、最近になって文章を書くことが好きだと分かったこと。昔から人と話すこと、特に相手を笑わせるのが好きだと思っていたが、人と関わるのは会話でも文章でも好きなんだということに気が付いた。この2つに共通することは、頭の中に地図を描くということ。目的地はどこか。行く順番や手段をどうするか。そんなことをずっと考えているのが好きなのだ。考えている内容によって鬱っぽくなったり、暴力的になったり、楽しかったりする。自分のことを文章にすることは僕にとって楽しい。楽しいことは前向きにドンドンやりたい。とても単純だ。
これらの理由で僕は“僕の物語”を書いていく。書くことによって僕が生きるヒントを得るように、僕の物語が世界の誰かのヒントになったら・・・・・たぶん嬉しい。